見るからに良くない意味がありそうな「吊るし人」
しかしながら、このカードに吊るされるくらいあいつは悪人だ!みたいな意味はありません。
重要なのは吊るされ、身動きがとれない今、何を思うのかという点です。このカードを読み解くキーワードは「静止」です。
今回は、「吊るし人」というカードが出たときの相手の気持ちについて正位置と逆位置から考察します。
正位置:己と向き合い、現実と向き合う時間

吊るされて逆さまなのでまるで逆位置みたい絵柄ですね。
吊るされている男に手を差し伸べることが今の彼の助けになるでしょうか。滑稽にも吊るされている彼もまた、そんな自分を見て欲しい、救って欲しいと思うでしょうか。
吊るされている時間は辛く、苦しく、孤独を感じる時間ですが、それと同時に真の意味で己と向き合うことのできる時間でもあります。今の彼に必要なのはなにより自分と向き合うことです。
このカードが出たときの相手の気持ちは「一人にしてほしい」、「覚悟を決めたい」、「冷静に考えたい」というような自己解決型の心理タイプであると言えます。そんなときに相手を気にかけてコミュニケーションをとっても野暮に思われちゃいます。とにかく今は待ちの時です。
正位置ならば、そんな今の自分と彼はしっかり向き合うことができているので、時間をかけて感情を落ち着かせ自分の考えがまとまるのを待てば、新たな気づきが見つかり事態は好転していくでしょう。しかし、次に説明する逆位置だとそうもいかないのです。
逆位置:現状をまだ受け入れられないでいる

逆位置の場合、吊るされ身動きのとれない現状をまだ受け入れられず、抗おうとしていると読み取れます。しかし、どんなに必死にもがいても縄がほどけることはなく、もどかしさを感じ、焦りを感じ、不安を感じ、恐怖を感じて自分の非力さを目の当たりにします。
そうやって苦しんで自分の無力さを認めてそんな自分を受け入れた先に新しい考えが生まれていくものですが、今の彼にはそれができず、現実から目を背け、投げやりになっています。
このカードが出たときの相手の気持ちは、「どうにもならないことがもどかしい」や「覚悟が決まらない」、「自分のことを受け入れられない」といったような精神が不安定でそれを自覚できない錯乱状態にあると言えます。
それは時間が解決してくれていつかは自分と向き合えるようになるかもしれません。相手が現状を受け入れられるように待ってあげることも大切です。でもいつまでも自分と向き合えず現実をシャットアウトして考えることすら辞めてしまっている。そんな彼を放置できないと思うなら手を差し伸べるべきです。
服役中の囚人が家族との面会の時間をきっかけに今まで向き合ってこなかった己と向き合い、自身の行動を悔いるように、他人の存在が自分と向き合うきっかけになることだってあります。むしろそっちのほうが多いんじゃないかと思ってます。自分と向き合うことの答えが自分の中だけにあるわけではありません。それを気づかせることができるのは他人の存在です。